ヨードは日本人が研究をおこない薬剤として使えるようにしたものです。その生い立ちにはヨードを薬として使うことの難しさやさまざまな挑戦が隠れています。
ヨードがいったい何なのかを知る糸口にもなるヨードの生い立ちについてご紹介します。
ヨードに注目した日本人
大正時代、ヨード(ヨウ素)の薬効と製造について研究をおこなった日本人がいました。それが薬学者の牧野民蔵氏と牧野千代蔵氏です。二人はヨードが甲状腺ホルモンを構成する上で絶対必要な成分であることに着眼しました。そして研究の末にヨウ素剤の製造に成功しました。
解明されたヨウ素剤の薬効
牧野氏らの研究によって、ヨウ素には血中コレステロールを減少させることがわかりました。また、体内の病的組織と結合して、それを破壊し、体外に排出する働きがあることも解明されました。
このことから、牧野氏らは高血圧症、結核、喘息に効果を発揮すると考えます。
抽出に関する難問
当時ヨウ素はわかめやこんぶから抽出されていました。大量に焼却し、その灰から要素を抽出していたのです。ただこの方法では少量しか採取できずにコストがかかりすぎていました。
ヨウ素剤の転機
ヨウ素を少量しか採取できない状況にあった研究ですが、その後天然ガスを採取する際に抽出できる無機質ヨウ素の利用に希望を見出したことで転機を迎えます。劇薬である無機質ヨウ素を服用できる有機質ヨウ素に変換する研究がはじまったのです。
研究の末誕生した「飲用ヨード」
牧野氏らの研究の結果、服用できる「飲用ヨード」が誕生しました。大正12年には製品化されています。この「飲用ヨード」は結核などに効くといわれ、当時にしては高価なものでしたが、国内外から注目されました。
大正から昭和、現代にいたるまでのヨード
完成後は注目を集めた「飲用ヨード」ですが、昭和の薬事法改正などを経て、厳しい状況におかれることになります。とうとう製造工場の閉鎖に追い込まれてしまったのです。ただし、「飲用ヨード」の有用性に着目した医師もいました。その医師による研究はその後も続けられ、さらにその意思を次ぐものへと受け継がれています。
まとめ
大正時代から研究が重ねられているヨード。現在でも、さまざまな形で研究が進められています。さらなる研究が重ねられた結果、疾病に対する効果が得られることが今以上に証明できるようになれば、将来的に日本でも広く普及していくのではないでしょうか?